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■目立つところにあるわけではなく、大自然に囲まれるように風林亭は佇んでいる。
「自分の為ではない。来てくれたお客様の為にここはあるんだよ」
そんなご主人の気持ちがお店から伝わってくるのか、なぜかとても入りやすい雰囲気を醸し出している。
■お店に入ろうとすると目に留まる場所がある。風林亭のご主人の自家農園だ。農薬や化学肥料を使わず、手をかけた野菜や果物が育っているのだと教えてくれた。
自ら育て、自ら調理し、自らふるまう。料理の始めから終わりまで全てをこなすご主人の体力と、それを継続する意志の強さに尊敬の念を覚える。
「うちはね。食材もうどんも季節や気温によって変わる。同じメニューでも毎日違うものを提供しているからね。」
■ご主人は決まったものを出すのではなく、その日その日で自分で作った食材の中から一番美味しいものを見極めて調理し、こだわりのうどんに添えて提供している。
料理をいただいている最中に、「その梅ゼリーの上のいちじくはね~」と食材について教えてくれるその様子は、まるで我が子を語るかのようだ。
うどんもただのうどんではない。自家製の酵母を入れ発酵させた生地を丁寧にこね、手延べしていく。
「うちのうどんはどちらかというとパンに近いかな」
聞くこと見ることのほとんどにオンリーワンが詰まっている。
■そう語るご主人の顔はどこか嬉しそう。食材はもちろん、ソースやジャムに至るまで全て手作り。
大変な作業だが、ご主人にとってそれは料理人としての「あたりまえ」で、お客さんとそのおいしさを共有することが「やりがい」につながっている。
ご主人の表には見せない努力と食材への想いに気づいた人たちは、どんなに遠かろうがまた来たくなってしまうのだと言う。
取材に行った我々もこの日からその仲間入りとなった。
■目の前に運ばれてきた料理がここに至るまで、どれほどの時間を要したのか、そして、それを毎日のように繰り返してきたことを考えると、気が遠くなる。
食材の栽培から盛り付け、お客様対応まで手がけ、料理のほぼ全てを知り尽くしたご主人の味は、きっと一般家庭では味わうことができない。
風林亭を訪れた際は、ご主人に「これって何ですか?」と気軽に聞いて欲しい。きっと新しい発見に出会えるはず。
取材協力:風林亭店主 小澤 幹雄 さん
【文】・【写真】シフトプラス株式会社、上野原市役所